研究内容

(1)自然免疫に関与する蛋白質の構造生物学的研究

免疫機構は,生体を細菌やウイルスなどの病原体から防御する機構であり,自然免疫と獲得免疫から構成されている。自然免疫システムは病原微生物感染に対する重要な生体防御のシステムである。病原微生物に対しいち早くその侵入を察知し、炎症反応を引き起こす。このシステムはヒトのみならず、昆虫などの無脊椎動物、植物にも備えられている。微生物表面にはPAMP(Pathogen-associated molecular pattern)と名付けられた微生物に特徴的な構造の繰り返し(分子パターン)が存在し、それを宿主のセンサーが認識する。自然免疫における代表的な病原体センサーとして1回膜貫通型膜タンパク質であるToll様受容体(TLR;Toll-like receptor)と細胞質局在型のNod様受容体(NLR;Nod-like receptor)が知られている(他にRLR, CLRなど)。病原体由来のPAMPだけでなく、壊死した細胞などから放出された自己由来の分子パターン(DAMP; danger-associated molecular pattern)によっても活性化される場合があり、これが自己免疫疾患の一因ともされる。そのため、TLRおよびNLRは抗ウイルス薬、免疫賦活剤、アジュバント、自己免疫疾患治療薬など様々な疾患・症状の創薬ターゲットである。
TLRの構造研究は精力的に行われ、我々のグループも世界に先駆けて一本鎖核酸を認識するTLR7ファミリー(TLR7, 8, 9)の構造解析に成功し、詳細なリガンド認識機構を解明した(Science 2013; Nature 2015; Immunity 2016; Immunity 2018)。
TLRに関してはこれまで構造情報が細胞外ドメインに限られて断片的な構造情報しか得られていない。またNLRに関しても構造解析した例が少数である。
我々はTLRの全長構造解析やNLRの構造解析を行うことによって、制御機構を“目に見える形で”表し、自然免疫に関わる分子の動作原理を明らかにし,さらに創薬への三次元構造的な基盤を与えることを目指している。
TLR及びNLRシグナリング
TLR及びNLRシグナリング

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東京大学
東京大学大学院 薬学系研究科・薬学部
PF-UA タンパク質結晶構造解析ユーザーグループ